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青葉の放言

大学生の戯言を綴っています。身の回りの出来事から政治・社会問題に至るまで雑多なことを書き連ねております。

参院選総括② そもそも「憲法」って何だ?

国内政治

憲法改正」へひた走る人々

 参議院選挙の結果を受けて、改憲の機運は高まりを見せています。安倍首相も12日の会見で憲法改正への意欲を示しました。

 懸念すべきは、「憲法改正」が目的化していることです。戦後のマッカーサー占領下で起草され制定された憲法は変えなければならない、という言質をしばしば耳にします。保守系団体「日本会議」の会長が13日に記者会見し、改憲を希望する旨を示したことは大きな話題となりました。

 自民党や、それを支援して改憲を後押しする勢力がベースにしているのが自民党憲法草案です。これは正直言って問題だらけです。この憲法草案をつくった当時の自民党総裁である谷垣幹事長は「エッジを効かせた」と発言し、現在の自民党議員も「たたき台」であり決定版ではないと述べています。それにも関わらず安倍首相はこれを「ベースにして」改憲論議を行うと述べました。彼らにとっては「憲法」の中身が問題なのではなく、「憲法改正」の事実が大事なのではないでしょうか。

 自民党憲法草案の問題点は後で指摘しますが、中身が雑であるという印象を受けます。本当に憲法改正が必要だと思うならば、国民の合意を得られるようにもう一度憲法草案を作成すべきです。

憲法を守れ」という言葉にすがる人たち

 改憲推進派にいろいろな問題はあるけれども、「憲法を守れ」と謳う護憲派の人々も相当見当違いのことを述べているような気がしています。

 「改憲阻止」で参議院選挙を戦ったことからもその戦略のまずさが分かります。特に民進党は「まず3分の2をとらせないこと。」という謎のキャッチフレーズで参院選を戦いました。経済で正面からぶつかり、その結果として3分の2を阻止した方が明らかに建設的であったにもかかわらず、です。憲法は確かに大切だけれども、現行憲法を必要以上に神格化してしまったために、「憲法を守れ」という言葉から離れられずにいるのです。

 改憲阻止は手段であって目的ではありません。改憲阻止という「手段」について主張するならば、国のグランドデザイン(目的)は明確でなければならないはずです。しかし、野党は国の基礎的な機能である経済のグランドデザインすら示すことができなかったのです。この点で、野党の「改憲阻止」はよくわからないのです。

 野党がすべきであるのは、まず、国のグランドデザインを大枠で決定することです。安全保障も経済も社会保障も統治機構改革も、すべて一度党内で議論の俎上に挙げるべきです。その上で、憲法は本当に変えなくてよいのか、絶対に守りたい条文は何なのか、少なくとも党内でコンセンサスを得るような努力をすべきです。改憲阻止を謳うのはそれからです。

素朴な憲法

 これまでみてきたように、改憲派護憲派も、本来あるべき憲法論議から離れたところで憲法を語っています。素朴な私の憲法論(大したものではありませんし、憲法学に特別依拠しているわけでもありません)を簡単にまとめたいと思います。

 

 憲法は「国や権力を縛るもの」である、という定義は揺るがすべきではないと思います。市民革命以降発達してきた「憲法」というものの根幹を成す部分であるからです。人権規定が一切ない憲法立法府や行政府の役割が一切明記されていない憲法。そんなものはもはや憲法ではありません。

 その前提に立ったうえで、憲法を再定義するならば、「最大公約数」「共通の理想」という言葉がしっくりくると思います。憲法とは、最大公約数です。憲法とは、共通の理想です。国民全員が納得できる最大公約数のルールだけが書き込まれた、共通の理想集であるべきです。その他の意見が割れるようなテーマに関しては法律で定めれば良いと思っています。憲法には国民全員が納得できることだけが書き込まれるべきです。

 その意味で、自民党憲法草案は非常に危険です。自民党憲法草案の中では、人権の制約概念として「公の秩序」という言葉が何度も登場します。人権の制約の程度は強かろうが弱かろうが政策レベルの話です。それを憲法で規定してしまうことの危険性を理解する必要があります。おおさか維新の会が示している憲法草案に関しても同様です。教育無償化を憲法に書き込んでしまうことで、のちの時代に変更が難しくなります。差別化を図って独自の政党カラーを出したいのは理解できるけれども、本当に変える必要がある条文は何なのか?あるいは、今の時代、そしてこれからの時代において普遍的な理想は何なのか?ということへの意識が薄いように感じられます。

 天皇の行為、三権の機能、自衛隊国防軍)の役割、あるいは教育の役割。憲法の段階では抽象的で構わないと思います。その代わり、国民全員が合意できるような条文にすることが重要です。

社会を知ることから始まる憲法論議

 参議院選挙を経て、憲法改正の論議に私たち国民も参加していくことになるでしょう。その際、社会を知ることが重要になってきます。それぞれの問題にどのような立場があり、どのような点で争っているかということを理解しなければ、憲法改正論議は進みません。ですから、国会議員の皆さんには、こういった整理から始めていただきたいと思っています。国民の側も、その論議にできる限りコミットしていくことが望まれます。

 例えば現行憲法の9条2項。自衛隊を戦力と見なさないことへの疑問は根強くあります。しかし、実際なされている議論は「変えるべきだ」「変えるべきじゃない」の水掛け論です。もうすこし国内の議論を整理してみると、自衛隊は必要ないとする立場、自衛隊は必要だが現行憲法を変える必要はないという立場、「自衛隊」を明記する形で憲法を改正するべきという立場、「国防軍」「自衛軍」を明記する形で憲法を改正するべきという立場があります。この4つの立場を考え、どうすれば折り合いをつけられるのか、ということを考えなければなりません。それぞれの立場からグランドデザインを語ってもらうこと、そして必要な場合には説得し納得してもらうこと。長い長いプロセスを経て合意を形成していかなければなりません。

 憲法改正には長い長い時間がかかると思います。「改正」「改正阻止」に躍起になっても意味はありません。それぞれの理想がどのように食い違っているのか?、そして、どうすれば国民全体のコンセンサスを得られるのか?ということ。まずじっくりと社会を見つめて、そこから考えていくべきです。これから始まる憲法論議は、21世紀における日本のあり方、あるいは世界のあり方を決めるものになります。将来に対する重い重い責任を噛みしめながら、その道を歩んでいかなければなりません。