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青葉の放言

大学生の戯言を綴っています。身の回りの出来事から政治・社会問題に至るまで雑多なことを書き連ねております。

トランプ大統領の誕生に寄せて①~トランプ氏勝利の理由~

 昨日午後、「トランプ大統領」が誕生する見込みとなりました。この結果に驚いた方も多かったと思います。日本のテレビ局はこぞって驚きとともに大統領選の結果を伝えました。経済的にも大きな影響が出ています。日経平均株価も1000円以上値下がりし、また為替でも1ドル101円台まで円高が進みました。今日の株価は反発して1100円ほど値上がりし、まさに「乱高下」という状況です。

 「衝撃的」「まさか」と報じられるこの結果ですが、なぜその「まさか」が起きてしまったのでしょうか。あるいは、それを「まさか」に仕立て上げたものは何だったのでしょうか?今日は、詳しい分析が出ていない段階ではありますが、大統領選の結果について考えたことを書いてみたいと思います。

 

想定内の「想定外」

 トランプが勝つと思っていたか?と問われれば、私の答えはNOです。多くのメディアと同じく、最後はクリントンが勝つだろう、というのが私の予想でした。しかし、「想定外」が起こる可能性は十分にあると思っていました(無責任な言い方ですが)。そして「想定外」が起これば日本は混乱するだろうな、という考えも漠然ながら持っていました。

 というのも、アメリカメディア各社が行った直前の世論調査では、スイングステートでの支持が非常に拮抗していたからです。本当に最後の最後まで結果の読めない州が7~9州ありました。そこのほとんどをトランプ氏がとれば勝利もあり得る、いくつかの分析をみる限りトランプ氏勝利は捨てきれない、と考えていました。

 とは言え、比較的トランプ氏寄りの予測サイト(fivethirtyeight)でさえ、トランプ氏の勝利確率は30%程度でした。後述する「隠れトランプ支持者」の存在を織り込んで考えたとしても、その確率は50%を超えないだろう、というのが一般的な見方だったように思います。では、なぜトランプ氏は予想を上回る票を獲得できたのでしょうか。2つの観点から見てみたいと思います。

 
①レッドとブルーを超えてつながった人々 

 まず、トランプ氏の勝利を決定づけたフロリダ・ノースカロライナ両州についてみていきたいと思います。この二つの州はともにスイングステートと呼ばれる激戦州であり、前日までメディア各社の予想が割れていた地域です。これらの州でトランプ氏が勝てたのは何故かということを考える時、この両州の「メキシコに近い」という点を見逃すわけにはいきません。メキシコ不法移民による不安は全米に広がっていましたが、その中でもジョージア・サウスカロライナを含むこの地域では一層重大な問題として根付いていました。そこに現れたのがトランプ氏です。”Build the wall!”と叫びながら不法移民の排斥を訴えました。白人層はもちろん、合法的に入ってきた移民たちさえも、不法移民の被害者として悩んでいたわけですから、問題を解決してくれそうなトランプに期待したのです。だからこそ、トランプ氏は両州で激戦を制することができたのです。

 次に、「番狂わせ」となった本来ブルーステートの地域、ペンシルベニア・ミシガン・ウィスコンシンといったラストベルト地域について考えてみたいと思います。民主党の強力な地盤で、なぜトランプ氏は勝つことができたのでしょうか。考えられる理由は二つあると思います。一つ目は、天気です。都市部に多いとされる移民などの民主党支持者は、雨が降ると投票に行かなくなるとも言われています。一方、共和党支持者は義理堅く投票に赴くと一般的に言われています。そうした状況のなかでペンシルベニアやミシガンでは雨が降りました。雨の中投票所に並ぶミシガン州の人々の画像がツイッターにあげられていましたが、その中の多数がトランプ支持者だったということなのかもしれません。二つ目は、白人労働者の不満です。以前の投稿で、「プア・ホワイト」という表現を使ったと思うのですが、それは間違いでした。トランプを支持した層を年収別に調べてみると、年収500万円以下の層はヒラリー氏を支持している人の方が多くなっています。むしろトランプ支持の中心となったのは年収500万~1000万の白人労働者です。平均年収を上回る人々がなぜ苦しんでいるのでしょうか。それは、「以前より」「昔より」苦しくなっているからです。〈自分たちは一応高校教育や短期大学教育を受けて、まじめに働いている。それなのに、なぜニューヨークやワシントンの一部の人間だけしか裕福に暮らせないのか?NAFTAやなんやら知らないが、我々が続けてきた自動車産業はもう瀕死の状態だ!〉これがペンシルバニアやミシガン、ウィスコンシンの人々の本音です。怒りです。今朝方知りましたが、この8年間でこれらの州ではすべて共和党知事が誕生していたようです。もちろん、トランプがこの地域に力を注いで選挙運動を展開したことも功を奏しているとは思いますが、「NAFTA反対、所得税減税」を訴えるトランプ氏が勝利したのも頷ける背景が存在していた、というところではないでしょうか。

②分断された人々

 トランプ氏は決して保守的な政治家でない、と私は思っています。アメリカンファースト・孤立主義ではあるけれど、それは決して高齢者や女性やマイノリティを見殺しにするというのではありません。これまでの社会福祉政策を基本的には継続したうえで、その上に経済発展を描いていこうとしているのです。この点で従来の共和党の「小さな政府」型経済政策とは決定的に異なります。〈1%の「上」とそれに頼るしかなかった年収500万円以下の人々=有色人種と都市部中心のクリントン陣営〉対〈政治的に取り残されてきた(相対的な)「下」=白人中心のトランプ陣営〉。

 右・左や白人・有色人種、あるいは男・女といった区別を越えて、今回の選挙戦ではそのような構図にアメリカが分断されたのです。

 

 当然のことながら、年収500万円以下の人々が必ずしもクリントン氏を応援したわけではありません。クリントン氏支持に回らなかった人々の中には、バーニー・サンダース氏に熱狂した人々が含まれます。「1%の金持ちと99%の貧乏人」というのはサンダース氏が訴えた言葉ですが、この言葉に共感した人々は1%の代表であるクリントン氏が嫌いなのです。実際にミシガン・ウィスコンシン民主党予備選ではサンダース氏が勝利しています。サンダース氏が蒔いた種はいつか花を咲かせるかもしれませんが、今回の大統領選挙の結果にも影響を与えたといえるのではないでしょうか。

 こうした結果からもわかるように、「1%」の人々は、今回の選挙の結果を本当にショッキングなものとしてとらえているのだと思います。クリントン大統領の誕生を信じて疑わなかったNYやワシントン、カリフォルニアといった大都市部の人々です。ハリウッドスターたちも、レディー・ガガもマドンナも。オバマ夫妻も敗者の一人です。オバマ大統領にいたっては、投票日直前に「トランプほど大統領にふさわしくない人物はいない」と発言したほどで、全面的にクリントン氏を支持していましたから、ダメージは大きいでしょう。現状維持のエネルギーは変革のエネルギーの前に敗れました。

 さらに、共和党のエスタブリッシュメントホワイトハウスの中枢からは距離を置くこととなりそうです。ジェブ・ブッシュ氏や知日派として知られるアーミテージ氏などです。彼らはトランプになるくらいなら民主党を応援するとさえ言っていたグループであり、もう元には戻れないでしょう。共和党予備選でトランプ氏と戦ったテッド・クルーズ氏やマルコ・ルビオ氏といった2010年当選の改革組がこれからの新しい共和党を作っていくことになるでしょう。

 いずれにしても、様々な分裂がA対Bとくくれない形で発生しています。それがまさに2016年のアメリカを象徴しているのであり、多様性を求めたが故の21世紀型「Civil War」なのかもしれません。

 

「トランプ大統領の誕生に寄せて②」に続く