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青葉の放言

大学生の戯言を綴っています。身の回りの出来事から政治・社会問題に至るまで雑多なことを書き連ねております。

トランプ大統領の誕生に寄せて②~メディアと市民のズレ~

ノーベンバー・サプライズがもたらすもの

 今日も、全米各地でデモが起こっています。”No my president!”の掛け声とともに、大勢の人が街を練り歩く姿をみて、選挙結果の衝撃の大きさを改めて感じているところです。選挙戦最終盤にも何が起こるかわからない、という意味で使われている「オクトーバー・サプライズ」という言葉がありますが、今回の選挙結果はむしろ「ノーベンバー・サプライズ」というべきなのかもしれません。

 ノーベンバー・サプライズは決して一過性のものではないと私は捉えています。というのも、トランプが火をつけた「本音」は、アメリカの歴史、いや、世界の歴史に横たわる非常に根深いものだからです。前回の投稿では、南部の人たちとラストベルト周辺の人たちに焦点を当て、トランプ大統領当選の理由を探りました。前回の投稿でも述べた通り、アメリカの分裂はA対Bという形で表せないものとなっています。骨でいえば粉砕骨折のような状況です。今後政権が移行した後も、様々な形で、この亀裂は顕在化してくるだろうと思います。

 今回は、もう一つの視点、なぜメディアは「トランプ勝利」を見抜けなかったのか、ということについて考えてみたいと思います。

 

「隠れトランプ支持者」はいない?

 

 『隠れトランプ支持者』を見抜くことができなかった―――――そうメディアは口を揃えています。トランプ支持者であることを公言しにくい状況だったのだ、それは女性差別発言をはじめとする差別発言を連発したトランプ氏のせいだ、といった論調です。そもそも統計データのとり方が古いのではないか、とか、大手メディアに正直に答えるのが嫌になったのではないか、とか。

 私は「隠れトランプ支持者」はそれほど多くなかったのではないかと感じています。前回みた通り、ラストベルト地域におけるトランプ氏勝利の要因は沢山ありましたし、正確なデータに基づいて正しく分析していた人たちは接戦でトランプ氏が勝利することを予測できていた人たちもいます。それ以外の州ではほとんどの予想が当たっています。ですから、一概に「隠れトランプ支持者」によって予想が外れた、という風潮は少し違和感があるのです。

 問題はもっと深いところにあるのではないか。―――――上記のようなことを鑑みるに、私はそう考えています。メディアが「予想を外した」こと自体はそれほど大きな問題ではないでしょう。世論調査などは、時代の変化に合わせながらマイナーチェンジをしていけば良いだけの話です。私が看過できないのは、ハフィントンポストがトランプ氏をエンタメ欄で報じてきたことであり、CNNが「マトモなクリントンvsならず者のトランプ」の構図を選挙戦の最終盤まで崩さなかったことです。たしかに、各メディアで支持政党がはっきりしているのはアメリカ流の民主主義でもあると思います。しかし、〈支持する・支持しない〉の感覚が、あまりにも一般市民とかけ離れてはいなかったのか。それを垂れ流していた日本のメディア、そのズレを見抜けなかった我々一般市民も含めて、今一度「メディアと市民」の関係について、胸に手を当てて考えてみるべきだと思います。

 

気付けなかった「感覚のズレ」

 具体的に言えば、メディアの失敗は、トランプ氏の経済政策に対しまともに取り合えなかったことかと思います。法人税所得税の減税という政策は、非常に魅力的です。レガーノミクスを彷彿とさせる経済政策は、アメリカ国民の心をとらえたことでしょう。しかし、選挙中のメディアはと言えば、「なんかいろいろ言っているけどそんなの実現不可能だよね」程度の感覚で、トランプ氏の経済政策もサンダース氏の経済政策も見過ごしてきました。これが示しているのは、メディアの怠慢よりももっと根が深い、「感覚のズレ」です。

 アメリカメディアだってエゴで報道しているわけではないでしょう。世論調査の数字も謙虚に見てきたと思います。それでも「クリントン氏優位」の見方が動かなかったのは、メディアの中に白人の中~上位所得者層の声を代弁できる人があまりにも少なかったからでないでしょうか。本来権力に対して批判的であるべきメディアがエスタブリッシュメント化しているのです。だからこそエスタブリッシュメント=1%の象徴であったクリントン氏を支持したのだと思います。

 そんな彼らにとってトランプ氏の勝利は「見たくないもの」「知りたくないもの」です。実際に、アメリカメディアの関係者が「トランプが大統領になるはずない」と発言していたということも各種記事でさんざん言われています。「謙虚に」数字を見ていたつもりでも、どこかで「無意識のうちに」クリントン優位になるような見方をしてしまっていたのではないでしょうか。だからこそ、本当はそこまで隠れていなかったトランプ支持者に気付くことができず、「隠れトランプ支持者」が誕生してしまったのではないでしょうか。

 そうであるとすれば、「隠れトランプ支持者」の存在は、メディアにとって非常に、非常に、根の深い問題をはらんでいるといえるのではないでしょうか。